昨日のあけがた、ネルに起こされて台所でぼんやりとつめたいお茶を飲んでいたら、
「りえちゃん、みてみて!」とでも言いたげなネルの声。
顔をあげると、ドアの向こう、隣室の窓の外の薄闇に、ふだん見ない位置ふだん見ない大きさの満月がしずかに沈みかけてゆくのが見えた。
黙って、ずっと見ていた。
私はあまり、「書けない」とか「描けない」とか、ってことがない。
いろんなものが、自分のなかで、出てくるべきときの順番待ちをしている。
だから、現実的な時間や体力にはできるだけ影響を受けないようにして、そっと次々と扉をあけてゆく。
すうすうと寝っ転がる黒猫ネル。
ほの白く光る、夜明けの満月。
こんな夏もあったかなと、いつか、また思う日がくる。
Comments