夜中のことです。
私はネルに起こされて、ぼんやりと作業机のノートをひらいたり閉じたりしていました。
半月が、グレイの雲にかくれてはまた光りゆくような夜でした。
そんな私に、あくびをしながらネルが言うのです。
「りえちゃんりえちゃん、今日はてをつないで寝まちょうよ」
いや、さっききみが起こしたんだよねえ。
「そうちまちょう、おててつないで、もう寝まちょう」
すこしずつ、秋が深まって空気が冷たくなる日々です。
私は毛布にくるまって、深呼吸をしました。
すぐ隣にころんとねころがっているネルが嬉しそうに、くーっと、手をひろげました。
コーヒー豆によく似た、ネルのこげ茶いろの肉球をそっと押しながら、明日はあれとこれをしなくちゃなあー…、などと思う間もなくすうっと眠りにおちる私に、これ以上なにができるでしょう。
手をつないで眠る私とネルを、夜更けの半月が優しく見ていました。
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