高2の頃好きだった短編集には、今でも覚えている場面がいくつかある。
その中で、「教授」にあこがれて音楽系の大学に行きたいのだけど家庭の方針でどうしても許されなくて、予備校帰りにふと入った楽器屋のキーボードで思わず戦メリを弾きだす男の子を描いた短編があったように思う。
それを真似て、学校帰りの楽器屋のキーボードに何度触ったことか。
私は、高校1・2年の時のクラスにどうしてもなじめなくて、いつも本を読んでいるか写譜しているかだった。
吹奏楽部だけが楽しかった。
そんな部活の大事な定期演奏会で、1年の時か2年の時かもうわからないけど、「ラストエンペラー」を演奏したことがある。
顧問でコンダクターの先生が、しみじみと胡弓を弾いてらしたのを覚えている。
私の動画連作『FLOWER ROAD』の#5「おひさままち」は、ずいぶん昔に世田谷文学賞の佳作に選んでいただいた詩を、ほとんどそのまま使っている。
そのイメージ曲は、だいぶ前からできていた。
わりと、するすると。ピアノで、ここはアコーディオンで、この和音で。と。
本番用には、朗読やアコーディオンのデモ音源を聴きながら、何度もピアノを弾いた。
ずいぶんあとになって、出だし和音なんかに「ラストエンペラー」の雰囲気がちょっとあるかもしんないかなあ…などと一人で勝手に思っていた。
「おひさままち」は、観る人それぞれに、そっといつか響けばいいと思う。
そんな作品だ。
この作品に参加してくれている3人、私を入れて4人は、時代は違えど、かつて同じ劇団に在籍していた。
同じ舞台を踏んで、同じことで笑けて、ふりかえる日々にはいつも誰かがいて。
いろんな季節がすぎて、もう何かをともにすることはないはずだったけど、私は、私の終焉と再生、かもしれないものをあえてかたちに起こした「おひさままち」を作品化するからには、彼らに立ち会ってもらえたらいい思っていた。
そう、まるでひとりごちのように願っていた。
そんな作品です。
参加してくれた人、観てくれた人、どうもありがとう。
元気でやってゆきます。
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