• naitou

「黎明」


少し曇ってグレイな夜明け空が、今は気持ちいい。


通りすがりにちょろりとエンターキーを踏んで、この数時間私が全力で作ったデータをまっさらにしようとする秘密結社ネルネル。

私はもちろん、

「ネル……おそろしい子!」

と、『ガラスの仮面』の月影先生のような台詞を胸の中で強く言う。


だんだん明るくなってゆく。

遠くのビルがひかりはじめた。

いつまでも夜明けだったらいいのに。


私が出た高校の文化祭は黎明祭という。

1年と2年の時は、吹奏楽部のステージのことでいっぱいだったけど、3年の時、クラスで演劇をやった。

「風と共に去りぬ」の舞台化という、今思えばおそろしい試みだったけど、心底楽しかったしみんなとても仲が良かったし、その年の文化祭の大賞をとったのを覚えている。

その時私は音響と制作みたいなことをやっていて、「大学入ったら、ものを書きながら、ひととこういうことやりたいな」ってぼんやり思っていた。


初めての個展の時、見に来てくれた高校吹奏楽部時代の友人に、「これ、私のひとり黎明祭みたいだよね」と話して笑いあった。


今でもいつまでも、夜明けの中にいる私は、現実にはけっこう年をとっていてさえないむかしがたりも増えてゆくかもしれないけど、

描いておかなくてはならないこと、私にしか書けないことは、

きっとちゃんと描いてゆく。誰か何かから、継いでゆく。