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かきもの

​詩や文章、以前の作品もふくめて気が向いた時に掲載します。

​絵やマンガ作品は、ギャラリー(Instagram→@nekokage.n)にてごらんいただけます。

(2025.11.26更新)

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 「ユートピアン」

水族館のある町に 

住んでいたことがあってね​

夜中によく自転車に乗って

夏の花火や

冬の流星群を

川岸まで見に行ってた

全部がぜんぶ

夢だったわけじゃ

なくってね

今はこうして

よく晴れた森で しあわせに暮らしていてね

だから もう 何ひとつ

思いだしたり 

忘れたり

​しなくてもいいんだと思う

音にならない音をたてて

回遊する魚たちなら

みな かんたんに知っているようなことを

ぼくらはまいにち

つきつめては てばなしてゆく

​       

     <詩画集「とてちてた」(七月堂)収録>

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またね って、なにげなく言えるのは

なんてしあわせなことだろう

そのかすかな痛みを知っている人は

なんと優しいことだろう

どんなによるべなくても

それは光っていて

時々 じかに 胸をうつ

​    <映像作品「おおつごもりのピアノフォルテ」収録>

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   「おひさままち」

 ここから先は ひとりでお行き

夜風の中にその声を聴いたとき

​ぼくは それがぼくの道だと

痛いほど思い知っていたから

​あのよのはてさえこえてゆくような銀河鉄道から ひとり降りて

このよのひかりに 生まれ直すことにした

 泣くことも

 ふりかえることも

 心とだえることもあるだろう

 それでもおまえは ひとりでお行き

泣いた ふりかえった 心とだえた

気持ちの折り合いなぞ 一生つくわけがない

それでもぼくは ただのぼくとして

この道を花道にと選んだのだ

きっと おそらく

いくたび生まれ変わることがあろうとも

ぼくは同じ夢を見るだろう

 すべてはここからはじまるのです

 これがおまえの道なのです

 さあ お行きなさい

風に立とう

いつかは花も咲くだろう

空を見よう

青空にひらくひまわりのように

​けだかくひかるおひさまを ぼくは待とう

​  <世田谷文学賞 詩部門佳作/

   ほか、映像作品「おひさままち」収録>

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「満月」

こうごうしい満月を

​うっかり落として割ってしまったとたん

まっくらやみになりかねない

ぼくらの夜に

たどるは

ひとすじのかそけきメロディ

​      <詩画集「とてちてた」(七月堂)収録>

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