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「レンズ」

  • 執筆者の写真: naitou
    naitou
  • 19 時間前
  • 読了時間: 2分
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先日、演劇誌『えんぶ』お送りいただいてありがとうございました。

お礼のお手紙もさしあげられないままで本当にごめんなさい。

前の号をいただいた際に、ずいぶん劇団初期の頃に二回ほど撮っていただいたカメラマンのかたの文章と写真のページで、ずっと手が止まってしまっていました。

あれはいつだろう、96~8年くらいだったのか?劇団の大半はまだ学生だったかもしれない。「卒業したらどうするの?」みたいなやりとりも出ていた頃かもしれない。

劇団の取材をしていただくのもまだほんの数回目くらいで、中野の喫茶店で編集部のかたといろいろお話したあとに、どこか公園に移動して人物写真をたくさん撮っていただきました。あの時もどの時も、ありがとうございました。

帰り道、男子陣が

「あのカメラマンさん美人だからレンズ越しに見つめあうとドキドキした」「俺もー」みたいに盛り上がってたのをとてもよく覚えています。

後日掲載誌を見た時「レンズの向こう側からはこういうふうに見えてたんだ!?」と私はびっくりしました。

その時撮っていただいた写真は掲載とはまた違ういい感じのカットが数枚、後日大きく焼いて送られてきました。

それは事務所をひきはらう最後の夏まで、ずっとだいじにとってありました。事務所の壁に貼っていたこともあったような気がします。

2009年7月初旬、会社をたたんで事務所を撤収する時、ネットで探した廃棄業者にお願いして、制作助手でついていてくれてた人と二人きり数時間でほぼすべてあらゆるものを廃棄しました。劇団や個人の記録はできるだけ各自に送りつつ。極限の夏でした。

たしかその時、その写真そのものももちろん処分はせずに、写っていた誰かの自宅に郵送したことと思います。


彼女のレンズ越しに見えている世界を通ってゆくたくさんの人々、写真に写りこむのは誰かのふだんからよくやるしぐさ、誰にも見せたことがない目、あの役でやったことがある表情、今度やる役でつかみかけている立姿、まだ若手、もう中堅、だいぶ長いこと光っている人。

それは今も昔もこれからも、一瞬そのシャッターにつかまえられてゆくことで、誌面にも世の中にもきちんと刻まれてゆくのだろうなあと思っています。


「元気でやっています。」とは、まだすべてのひとには言えない私です。

それでも。

またどこかで、元気でお会いしましょう。



 
 
 

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