「のらねこ気分さ」
- naitou
- 7月10日
- 読了時間: 5分

さて、人生で初めてかも!くらいに髪を短くした私です。
美容院で雑誌を見ながらちょっとうとうとしてしまって、目が覚めたら
「…おめー誰だよ」
っていうほどショートカットの人が鏡の中にいたのでした。
本当はもっと明るい色も入れてもらおうかと思っていたんだけど、そんなに頻繁に美容院に行けないので色のケアがしにくいかなという話をしたら、普通にほとんど黒にしてくれました。
私の行く美容院にはむくむくの犬がいて、シャンプー台に移動する時におたがいちょっかいを出すのが好き。
20代の演劇時代、髪は自分で切っていて、だいたいオレンジか茶色系の強めの色を入れていました。
なんでそうしていたかたぶん理由はないけれど、今でもそういう髪の女の子を街で見かけるとちょっと懐かしくなる時があります。
美容院のイスでは雑誌の『天然生活』をめくっていて、この赤いシロップ作れるかなあ、とか、これはしないな私は、などとぼんやりながめていたら、アイヌ料理のお店の写真と記事があって、それは今は違う場所にあるんだけども94年に早稲田で開店とあって、
「そんなお店どこにあったかしらん?」と思いました。
でも美容院を出て少しして、暑い日差しの中を歩いていたら
「あ、それ行ったことあった!」
と急に思い出したのです。早稲田通りから理工学部方面へ明治通りに入ってちょっとしたところに、木造りの小屋みたいな趣のあるお店があったことを。
ずっと親しかったスタッフでもある旧友に「よく行くんですよ」と連れて行ってもらったことがあったんだった。
「わあ、前からここ知ってたら良かった!」と、なんだか居心地よく楽しく彼女と夕ご飯を一緒に食べたのでした。
雑誌ではそのお店にまつわる映画のことにも触れていて、読み進むうちに
「…この映画って、先月もよりの映画館に来てたやつでは?」とも気づいたのです。
あれ、だから誰々が観に来てたのかな、などとあとで思いあたったりもして、私の知らない気づかないところで世界はいつでもまわっていることをそっと思ったのでした。
写真は、猫の写真集。
(その下の毛並みはもちろん、ネル。机の上にずっと横たわっていて、一生どかない。)
古本屋さんなどでよく、猫の写真集を集めています。
その中で、これはいつどこでだったか、やはり古本屋さんで手に取ってぱらぱらと眺めていたら、途中の写真に
「わ!」
と思ったのです。
買って帰って、家の人や昔からの友人にそれを見せるとすぐ
「これって、海乃家からの帰り道じゃない?」
と正解が返ってきました。
この本は都内のあちこちの街角にいる野良猫の写真を集めたものなのだけど、その中の<新宿区高田馬場>というページは、線路沿いの小さなスナックばかりの小道で写真の奥に高田馬場駅が映り込んでいるというものです。
その写真には写っていない手前の行き止まりに、「海乃家」はありました。
そのへんの学生や劇団にとっては、うちあげの定番場所でした。
二階か三階建て(&地下)で、一人2500円くらいで座敷をふたつみっつくらい借りられて持ち込み自由で(店からはお酒と揚げ物なども出てくる)出入り自由で翌日の夜までいていい(眠る人続出)。
今思うとおそろしいほどラフな昭和感でいっぱいな場でした。
学内の立て看板でよその劇団の公演日程などはだいたいわかっているので、同じ千秋楽でバラシ終わって、どらま館かスペース5かどこか近隣の劇場を出てここまでたどり着く時間はだいたい一緒(真夜中少し前)。スタッフ陣はもっと後の真夜中で、本当におつかれさまなのでした。
「地下に**いるからちょっと行ってくる」なんて他の団体に遊びに行く人もいたし、私は同じ劇団に当時いた親友とパフェを食べに午前三時頃抜け出して、近くのジョナサンまで自転車で二人乗りして行ってえんえんと公演のことや女子トークをして、帰ってきたら全員寝ていて、小声で「え…」「起こしちゃまずい…よね?」と言いながら寝てる人たちの間をふたりでそろそろ歩きかけるとすぐに大爆笑で全員が「どこ行ってんだよ!」と起き上がってくる…
昔のことすぎていつのことだかもうわかんない話ですね。
そんな海乃家はもうありません。
ずいぶん前になくなったと聞きました。
最近のニュースでは、高田馬場駅界隈の不法(?)建築が取り壊されることを知って、海乃家手前のガード下、昼は蕎麦で夜は寿司の店あたりばかりが映っていて、景色もすっかり変わってゆくのだろうと思います。
この写真集の写真の中の景色は、とてもよく知ってはいるけれど、
海乃家への行き(深夜)は公演とバラシ終わりで全員が疲れ切っていて、帰り(朝か昼)は泥酔して眠いので、その景色じたいは記憶のなかでは朦朧としています。
それでも、その写真を一目見れば「海乃家んとこでしょ?」とわかる人はもう本当にかなりの数いると思うのです。
スナックがいっぱいあって、線路ぞいでやかましくて、大荷物で朦朧と歩いた小道。
野良猫をよく見かけた小道。
写真はその時その場の景色をちゃんと切り取っていたのでした。
最近、長めの文章や昔の記憶などをここに書く回が多いのは、ひとえに自分のためであって、誰が読んでも読まなくても別にかまわなくって。
でも楽しかったことだけはちゃんと書いておこうと思っています。
それは誰かを楽にさせてあげるためでは全くなくって、ただただ、自分の日々を描きだす練習として。
そういう私がいていいと今は思っています。
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