「ブレス」
- naitou

- 7月9日
- 読了時間: 3分

海にでも行きたい。
でも、どちらかと言えば川遊びの方が好きな私です。
海のある鎌倉に住んでいた期間は短かったけど(小5~小6の途中まで)ちょっと行けば山やたくさんのお寺やお店があって、素敵なところでした。
小学校はまあ、転校生の私にはたいしておもしろい場所ではなかったように思います。
その頃になると、「どーせここもまたすぐ出ていかなくちゃなんないんだしな」的な気持ちでいっぱいだったし。
広島から鎌倉の小学校に転校していってすぐ、ハーフの美しい兄妹が転校してきました。
クラスは違ったけど、本の挿絵のように美しくてかわいらしくて家も同じ方向だったので、同じ転校生としてなんとなく気にはかけていて。
それから少しした季節の学年遠足で、出先でお弁当の時間になってクラスの子たちとなんとなく輪になっていると、近くの植え込みでその美しい女の子がひとりでサンドイッチをひろげているのが見えました。
その時、若い男の先生が近づいて行って彼女の目線にしゃがみこみ、優しい声で
「ドイツから来たんだって?」
と話しかけました。
少し間があいて、彼女は無言でしくしくと泣き始めたのでした。
私は、彼女の気持ちが痛いほどわかって、私まで泣き出してしまいそうでした。
若い男の先生はあせって
「え…なんで、泣くの、かな…?どうしたの…?」
少しおろおろとしてしまって、他の年配の先生がたも気にして近寄ってきたかと思います。
先生は別に悪くないと思う、今でも。
でも、転校したてで(ましてや彼女のように外国から日本に来て)大人になりかけてゆくこの微妙な年齢で前の土地や友達のことを思ってまだこの場になじめてなくて言葉も苦手で、そんな時に知らない大人がほがらかに「ドイツから来たんだって?」と話しかけてきたら…
泣く。絶対。
あなたが無神経に触れてきていいことじゃない、って思って、その説明のつかなさにもまた涙が出ると思う。
先生はきっと、ドイツの地名や食べ物などのおしゃべりを彼女と展開したり、なんなら他の子も話にひきこんで馴染めるような話題でなごませたかったんだと思う。
もちろんそういうことへの対応が素敵にできる子も社会には一定数いる。
でもできない子も、一定数いる。
私はできない子だったから、たくさん泣いてきた。
それでいいと今は思っています。
その頃始めた吹奏楽、トランペットの練習に集中することは子供時代の私をずいぶんとしっかりさせてくれました。
学校に行く理由はそれだけと言っても過言ではなかったかもしれない。
音を出すのも大変、1オクターブ出せるようになるのも大変。
でもその過程が本当に楽しかった。
それまでピアノはひとりで弾くものだったし、音楽の授業はあまりにも様子がまちまちだったから、この小学校の管楽器バンドで他の人や楽器と合わせてつくってゆく音楽そのものに私はすぐさま夢中になっていったのでした。
今日も暑くなりそうです。
海のある都市、川のある町。
水がおおらかにたっぷりと存在する土地は、とても呼吸がしやすいなと今でも思っています。



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