「天に花咲け、地に花咲け」
- naitou

- 8月20日
- 読了時間: 3分

えらい長いこと時間をかけてとことこと各駅電車に乗って、柏まで。
所用をいくつかすませて、ハックルベリーブックスさんへ。会いたかった本がたくさん私を待っているようで「また会えたね」と思わずにこりとしてしまうこと何度か。
こういう場において、すぎてきた景色そして誰かに伝えゆきたい景色、そのどれもが本というかたちを経ていること、その時と歴史にいつもはっとさせられます。

こういう時、この数十年かのなにもかもを振り捨てて、ただのものさみしい女の子のような気分になりがちな私がいます。
でもかなり充実してましたよ、あの日々は。
滝平二郎さんの絵+斎藤隆介さんの物語は、おさなかった頃の私に強く優しく添ってくれていたので思わず手ぬぐいを購入。

そこからすぐそこ、カレーの店『ボンベイ』にて遅めの昼ごはん。
柏市内のよそのお店いくつかでボンベイの話をする時「高校の頃部活のみんなでよく行ってたんです、あっちのほうにあった頃」と、左手をぼんやり駅の左(南柏方面)に向けると、みんな笑顔になって「あああの頃ね。あっちね。うん」と次々と記憶を話してくださいます。
そのカレーの変わらない辛さに少ししんみりとしてしまう私。
入口の壁面に、県柏の大先輩・江口先輩のサインを見つけて、写真を撮らせてもらいました。
そうね、ここは県柏の先輩や後輩がよくバイトしてたしね。
私はもう本当にこの町をすぐさま出たくてなにもかもを振り切りたくてのはたち前後だったけど、ごめん本当に今さらなんだけど、その地を愛してきちんと暮らし続けてゆくことを選んだひとの気持ちはとても大切なものなのだと、今ではちゃんと心から思っています。
ボンベイの入ったビルの上にあがって、中古レコード屋さんでのんきにいろいろと物色。
『プリーズミスターポストマン』を手もとに置いておきたかったので買うと、お店のおじさんが「ビートルズとカーペンターズ、またはベンチャーズの歴史」について長いこと話してくださいました。
知ってることも知らないことも、たいした受け答えができない程度の私でごめんなさい…。
『プリーズミスターポストマン』は、10歳の時、初めて吹奏楽で演奏した曲だったから、とっておきたかったのでした。
10歳て。
ああでもビートルズメドレーとかやったな、ってことはそっちの譜面だったかな、などと思いつつ。
駅の下すぐのアーケードの方に行くと、<カルチェ5>という、大きめな新星堂ビルがあります。当時は大流行(?)の文化ビル。
いやもう、今は家電量販店やらいろいろ他店が入っていたから、新星堂だけではないのでしょう。
高校の頃は、日曜の昼下がり、部活の日曜練習を終えて自転車で柏駅まで出て『ボンベイ』でいちばん辛いカシミールを食べて、<カルチェ5>新星堂の1階でレコードを見て(サザンのすいかの缶とか、みんな買ってたね。そんな時代)、上の書店で立ち読みして、上の楽器店コーナーで金管用のバルブオイルやクロスを買ったり(木管の子はリード買ったり)、最終的に店頭のキーボードで「戦メリ」を弾き逃げしてく…。
こう書くだけ書いたら楽しそうですね。
あの頃、そんなに楽しかったかどうかは、今はもうわかりません。
私は私でいい、とまっすぐに思えるようになるまで、もう本当に、ずいぶん長いこと時間と経験がかかったのです。
「天に花咲け、地に花咲け」は、斎藤隆介(滝平二郎:切り絵)作の『ゆき』で、雪ん子の少女を地上に送り出す時の<じんじい>の言葉。
7歳くらいの私には、この言葉が呪文のように祈りのようにくりかえし響いていたのだと思います。



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